あるおじいちゃんが言いました。
この柿の木になる柿は、甘くておいしいんだ。
毎年なっては、近所に人に配るのが楽しみで。
皆喜んでくれるよ。
うちのじいさんの代から植えてある大事な柿の木なんだ。
だけど、土地を売るから切らなきゃならない。
今までなんとか維持してきたけど、もう限界だ。
身近な不動産といえば、家。
だれもが皆、家に住んでいます。
一生懸命、夫婦で買ったマンション。
土地から探してこだわった戸建て。
会社に通いやすいと借りた1LDKのマンション。
都心へ希望を持って住んだお風呂の無いアパート。
だれもが帰る場所として当たり前にある場所です。
そんな大切で、思い出がつまった「ところ」を売らなきゃいけないときがあります。
先日も離婚するので財産分与するために家を売らなきゃいけない、と涙ながらに相談に来られた方がいました。
結婚して、新居として探した新築の家。やがて、子供が出来て、柱には子供の身長が刻まれた思い出があふれる家を手放すことは、ご夫婦もお子さん達も悲しい現実となります。
わたしは、そんな想いのかたまりである家を売らなきゃならない。
おじいちゃんのおじいちゃんが植えた柿の木を切らなきゃならない。
そんな「別れ」を共に迎えその先を歩まれる方々をみれば、何が一番良い方法なのかを模索するのは、当たり前のことだと思います。
本当にこの方法でよかったのか、と悩むこともあります。
ただ、わたしにできることは、悩み抜いてなんとか現実をかえたいと一握りの希望をもったお客さんにとって、不動産のプロとして、ときに家族として、親にもなれば子供にもなって一緒に考えて悩んで、未来は絶対に明るいと信じて、歩み進むことです。